生産性向上の一環としての、多能工化について考えてみます。
考え方は理解できるのですが、運用の誤りの例もあります。
聞きかじった知識を元に、強引に推し進めてもうまくいきません。
一つ間違えば、人を使い潰すだけの結果に終わると思います。
旋盤とフライス両方できるようになればいいというのがそう。
これは量産の話であって、一品加工では簡単ではありません。
本業に関連することから、徐々に守備範囲を広げるのが理想です。
・ 本人の適性、意向を配慮してから
・ スーパーマンは、スーパーいい加減と紙一重
・ 一人当たりの負担を増やすのは本末転倒
これらについてお話します。
本人の適性、意向を考慮する
旋盤からフライス、または逆への転向は本人の意向が第一です。
両方やりたいです、と志願する人以外にやらせてはいけない。
旋盤もフライスも、それぞれが専門職種です。
両方とも、使えるようになるのはかなりの時間が必要です。
加工者の多くは、どちらか一方を極めたいと思っています。
会社都合で人手が足りないところにあてがうなど、人材潰しです。
現に何人もの若手が、コンバートされて一週間以内に離職しました。
治工具製造メーカーが、人間性耐久試験治具になってはいけない。
この話題になると、どうしても私は怒りがこみ上げてきます。
ちょっと冷静さを欠いた文章になってしまった点は、ご容赦ください。
現場の末端、最終工程にいると、怨嗟の声が聞こえてきます。
お偉いさんが唱えることと、現場の乖離を目の当たりしています。
スーパーマンは、スーパーいい加減と紙一重
旋盤とフライスの件をもう少しお話します。
中途半端に両方とも使える人がいることも知っています。
実際のところ、何でもできるは何にもできない、につながります。
スーパーマンと、スーパーいい加減は紙一重です。
先に述べた通り、相当の経験を積まないとできません。
たしかに職業訓練などでは、両方とも操作法くらいは習うでしょう。
しかしそれらは基本中の基本であって、実践では通用しません。
治工具部品の製作は、そんなに簡単ではないと思います。
両方とも達人級の加工者が時々いますが、ほんの一握りです。
マスターゲージや金型製造メーカーには、そんなスーパーマンがいます。
さらに円筒研削盤、多軸加工機まで使える万能選手も。
自分の工場を持つ目標でもあれば、熱心に習得するでしょう。
でもほとんどの方は、そこまでの意思は持ち合わせていません。
一人当たりの負担を増やすのは本末転倒
多能工化の最大の目的は、欠員が出ても補える人材確保です。
中小零細の人たちを救うのはライフワークバランスではありません。
業務の複数担当制だけだと信じています。
急に休みたい時に、代わりの人がいてくれればどれだけ助かることか。
しかし一つ間違えば、多能工化が組織に不幸をもたらします。
一人当たり負担を増やし、少人数で生産活動するのとは違います。
何でもできるようにして、あれもこれも兼務させるなど、本末転倒です。
小規模零細事業所の一部に、こういう動きを歓迎するふしがあります。
仮に個人のがんばりで、兼務できるようになったとします。
工賃が減って儲かったのか、完成時間が遅くなったと解釈すべきか。
こんな状態を仮に喜ぶようになったら、もう負け犬メーカーだということ。
若手の方々は、間違いなく入社を敬遠するようになります。
まとめ
多能工化は本人の意向確認の上で進めてください。
本業と関連することから始め、徐々に守備範囲を広げること。
何でもできる超一流の人材には、相応の待遇をしてください。
報酬は同じで、やることだけ増やされたら、たまったものではありません
優秀な方は『ここまでできるのならば、他所でやるよ』って思うはずです。
